
「このプリンター、両面印刷ってどうやるんでしたっけ?」
「共有フォルダはどこから開くんでしたっけ?」
「新しいパソコンにメールを設定する方法、誰か分かりますか?」
「○○さんが休みなので、パスワードが分かりません」
中小企業や店舗のIT環境を見ていると、このような「ちょっとしたITの質問」が何度も繰り返されていることがあります。

1回の質問は数分でも、質問する人と答える人の両方の仕事が止まります。
さらに問題なのが、
「その設定は○○さんしか分からない」
という状態です。

担当者が休んだり、異動したり、退職したりしただけで、
- メール設定が分からない
- プリンターを追加できない
- 共有フォルダへ接続できない
- バックアップ方法が分からない
- ホームページの更新方法が分からない
- 各サービスの管理画面へログインできない
といった問題が一気に表面化することがあります。

そこで今回は、ChatGPTなどの生成AIを使って、中小企業でも無理なく作れる「社内ITマニュアル」について紹介します。
難しいシステムを導入する必要はありません。
まずは社内で何度も質問されている作業を1つ選び、
「誰かに聞かなくても、そのマニュアルを見ればできる」状態を作るところから始めてみましょう。
社内ITで怖いのは「○○さんしか分からない」
小規模な会社では、専任のIT担当者がいないことも珍しくありません。
その結果、
- パソコンに詳しい社員
- 昔からいる社員
- 社長
など、特定の人がIT関係をまとめて担当しているケースがあります。
普段はそれでも問題なく仕事が回ります。
しかし、その人しか分からない状態が続くと、会社としては大きなリスクになります。
例えば、
・新しい社員が入ったけれど、メール設定方法が分からない。
・パソコンを買い替えたけれど、共有フォルダへ接続できない。
・プリンターを交換したら、誰もスキャン設定を直せない。
・WordPressの更新方法を知っていた社員が退職してしまった。
こうした状態です。
つまり重要なのは、
「できる人がいること」ではなく、「その人がいなくてもできる状態になっていること」
です。
そのために役立つのが、社内ITマニュアルです。
ITマニュアルは「詳しい資料」ではなく「迷わない資料」
マニュアルというと、何十ページもある分厚い資料を想像するかもしれません。
しかし、日常的なIT作業であれば、そこまで複雑にする必要はありません。
例えば、
「社内共有フォルダの開き方」
というマニュアルなら、次のような形でも十分です。
STEP 1
エクスプローラーを開く
【画面画像】
↓
STEP 2
「ネットワーク」をクリックする
【画面画像】
↓
STEP 3
対象のパソコンまたはNASを開く
【画面画像】
↓
STEP 4
「work」フォルダを開く
【画面画像】
長い文章を書くより、
画面を見せて、押す場所を示して、短い説明を付ける。
この方が、実際にパソコンを操作しながら確認しやすくなります。
大切なのは、
作った人が満足するマニュアルではなく、初めて操作する人が迷わないマニュアルにすることです。
おすすめは「A4・1枚・1作業」

社内ITマニュアルを作るときは、1つの作業を1つのマニュアルに分ける方法がおすすめです。
例えば、「パソコンマニュアル」という100ページの資料を作るより、
- 新しいパソコンでメールを設定する
- 共有フォルダを開く
- プリンターを追加する
- スキャンしたPDFを確認する
- Wi-Fiへ接続する
- パスワードを変更する
- WordPressへログインする
- ホームページのお知らせを更新する
といった形で分けます。
必要な情報だけを探せるため、現場ではこちらの方が使いやすくなります。
【テンプレート】中小企業向け社内ITマニュアル

基本形として、次の項目を入れておくと使いやすくなります。
業務名
何をするマニュアルなのか、一目で分かる名前にします。
悪い例
PC設定
良い例
新しいパソコンで会社メールを設定する方法
目的
この作業を何のために行うのかを書きます。
例:新しいパソコンで会社メールを送受信できるようにするため
対象者
誰が使うマニュアルなのかを書きます。
例:社員・新入社員・パートスタッフ
作業を始めるタイミング
- 新しいパソコンを購入したとき
- パソコンを交換したとき
- メール設定をやり直すとき
事前に必要なもの
- パソコン
- メールアドレス
- メールパスワード
- サーバー情報
- 管理者から渡された設定資料
注意:パスワードそのものを、誰でも閲覧できるマニュアルへ直接書くのは避けましょう。会社として安全な管理方法を決めておくことが大切です。
STEP 1
【実際の画面画像】
やることを短く書く。
STEP 2
【実際の画面画像】
次に行う操作を書く。
STEP 3
【実際の画面画像】
確認する項目を書く。
困った場合
ここが非常に重要です。
パスワードが分からない
→ 勝手に変更せず、管理担当者へ確認する。
エラーが表示された
→ エラー画面を閉じる前にスクリーンショットを撮る。
共有フォルダへ入れない
→ 同じ操作を何度も繰り返さず管理担当者へ連絡する。
完了条件
何ができたら作業終了なのかを明確にします。
例:
「自分宛てにテストメールを送り、送受信できたら完了」
更新情報
作成日:
最終更新日:
担当者:
最初にマニュアル化したい社内IT業務

全部を一気にマニュアル化する必要はありません。
まずは、社内で質問が多い作業から始めます。
1.プリンター・複合機
- 印刷できないときの確認方法
- 両面印刷
- カラー印刷
- 用紙サイズ変更
- スキャン方法
- スキャンしたPDFの保存場所
プリンターや複合機は、同じ質問が繰り返されやすい分野です。
2.メール
- Outlookなどへのメール設定
- パスワード変更
- 添付ファイルの保存
- 迷惑メール確認
- メールが届かない場合の確認
メールは仕事へ直接影響するため、最低限の手順を残しておくと安心です。
3.共有フォルダ・NAS
- 共有フォルダの開き方
- 保存場所
- ファイル名のルール
- 接続できない場合
- 削除してはいけないフォルダ
共有フォルダは、「どこに保存したか分からない」という問題を減らすことにもつながります。
4.新しいパソコンの準備
- Windows初期設定
- Microsoftアカウント
- メール
- Office
- プリンター
- 共有フォルダ
- ブラウザ
- 必要な業務ソフト
新入社員が入るたびにゼロから設定している会社ほど、マニュアル化の効果が出やすい分野です。
【内部リンク候補】新入社員用パソコン準備の記事
5.退職者のパソコン
- データをどこへ移すか
- メールをどうするか
- Microsoft・Googleなどのアカウント
- ブラウザに保存された情報
- クラウドサービス
- 社内システムのアカウント
- パソコンを再利用する場合の初期化
担当者の判断だけで処理していると、必要なデータまで消してしまう可能性があります。
【内部リンク候補】退職者PC再利用の記事
6.ホームページ・WordPress
- ログイン方法
- お知らせ投稿
- 画像追加
- ページ修正
- プラグイン更新
- WordPress更新
- バックアップ
WordPressを社内で更新している場合は、「どこまで社員が行ってよいのか」という判断範囲も決めておくと安心です。
ChatGPTならマニュアルの文章整理を手伝ってくれる

マニュアルを作ろうとして止まりやすいのが、
「文章を書くのが面倒」
という問題です。
ここはChatGPTなどの生成AIを使えます。
例えば、自分で作業をしながら、
1.デスクトップ左下の検索をクリック
2.Outlookと入力
3.Outlookを起動
4.アカウント追加をクリック
5.メールアドレスを入力
程度のメモを作ります。
それをChatGPTへ渡し、
「パソコンに詳しくない新入社員向けの社内マニュアルとして、1工程1操作になるよう整理してください。専門用語には簡単な説明を付けてください」
と依頼すれば、文章を整理できます。
つまり、
社員がゼロから立派なマニュアルを書く必要はありません。
実際の作業手順を集め、AIに整理してもらえばよいのです。
ChatGPTを「新人役」として使う方法もおすすめ

さらに便利なのが、作ったマニュアルをChatGPTにチェックさせる使い方です。
例えば、次のように依頼します。
あなたは今日入社したばかりの、パソコン操作に詳しくない社員です。
次の社内ITマニュアルを読み、
- 意味が分からない言葉
- 操作場所が分からない部分
- 説明が飛んでいる部分
- 画像が必要な部分
- 判断に迷いそうな部分
- エラー時の説明が不足している部分
を指摘してください。内容を推測して補完せず、分からない部分は「不足情報」としてください。
この使い方なら、マニュアルを書かせるだけではなく、品質チェックにもAIを使えます。
マニュアルを作った本人だけで確認しない

マニュアルが完成したら、できればその作業を知らない人に使ってもらいましょう。
そして、
口頭で説明しない
のがポイントです。

マニュアルだけを渡して作業してもらいます。
そこで、
- この画面が分からない
- どこを押すの?
- ここから先へ進めない
という部分が出てきたら、そこが改善ポイントです。
作業を知っている本人は、説明が抜けていても頭の中で補えます。
初めて作業する人が、誰にも聞かず最後までできるかどうか。
これが最も分かりやすいテストになります。
「どこにあるか分からないマニュアル」では意味がない

マニュアルを作ること以上に重要なのが、見つけられる状態にすることです。
悪い例
複合機マニュアル3
良い例
複合機|スキャン|PDFが届かない場合
悪い例
PC設定
良い例
新しいパソコン|会社メール|Outlook設定
ポイントは、
管理者が整理しやすい名前ではなく、社員が検索しそうな言葉を入れること。
です。
保存場所も、
- Google Drive
- OneDrive
- 社内NAS
- 共有フォルダ
- 社内ポータル
など、会社で一つに決めた方が管理しやすくなります。
マニュアルを作る前に「この仕事は必要?」も確認する
ここも重要です。
何でもマニュアル化すればいいわけではありません。
例えば、
毎日社員が同じExcelへ入力し、その内容を別のExcelへコピーし、さらにメールで担当者へ送っている。
この業務を完璧にマニュアル化しても、手作業そのものは減りません。
その場合は、そもそも自動化できないかを考えた方がよいでしょう。
- この作業自体をなくせないか
- 回数を減らせないか
- 自動化できないか
- AIへ任せられないか
- それでも人が行うならマニュアル化する
AIを使う目的は、
面倒な仕事を高速で続けることではなく、面倒な仕事そのものを減らすことです。
まずは1つだけ作ってみる

会社中のITマニュアルを一気に作る必要はありません。
例えば明日、社内で誰かが、
「これどうやるんでしたっけ?」
と聞いたら、その作業をメモしてみてください。
同じ質問が何度も出るようなら、1つだけマニュアルにします。
1日目|質問を記録する
よく聞かれるITの質問を記録します。
2日目|1つ選ぶ
質問回数が多い作業を1つ選びます。
3日目|画面を撮る
実際の操作をしながらスクリーンショットを撮ります。
4日目|マニュアル化する
画像+短い文章で手順を整理します。
5日目|ChatGPTでチェックする
新人の立場から分かりにくい場所を指摘してもらいます。
6日目|実際に使ってもらう
別の社員に、説明せずマニュアルだけで作業してもらいます。
7日目|修正する
分からなかった部分を直します。
これだけでも、会社の中に1つ「人へ聞かなくてもできる仕事」が増えます。
AI時代だからこそ「会社の仕事を言葉にする」ことが重要

生成AIが普及すると、「AIに仕事を任せたい」という場面も増えていくでしょう。
しかし、AIへ仕事を任せるためには、そもそも会社がその仕事のやり方を説明できる状態になっている必要があります。
例えば、
「問い合わせが来たら適切に対応してください」
だけでは、AIにも新人にも分かりません。
しかし、
- 問い合わせ内容を確認する
- 既存顧客か新規顧客か確認する
- ○○の場合はAへ送る
- △△の場合はBへ送る
- 判断できない場合は担当者へ確認する
まで整理されていれば、仕組み化しやすくなります。
つまり、今作る社内マニュアルは、新人教育だけのためではありません。
将来、AIや自動化ツールへ仕事を任せるための「会社の業務データ」にもなっていきます。
社内ITは「パソコンに詳しい人任せ」にしない

中小企業では、専任のIT担当者を置くのが難しいことがあります。
だからこそ、すべてを社員一人の頭の中へ置いておくのではなく、
- パソコン
- メール
- プリンター
- 共有フォルダ
- ネットワーク
- バックアップ
- WordPress
- クラウドサービス
などについて、会社として分かる状態を少しずつ作ることが大切です。
「○○さんがいないと分からない」から、
「マニュアルを見れば分かる」へ。
「毎回先輩へ聞く」から、
「まず自分で確認できる」へ。
この積み重ねが、日々の小さなITトラブルや業務の中断を減らしてくれます。
茨城県内の中小企業・個人事業主のIT環境整理もご相談ください
アポロン7では、茨城県内の中小企業・店舗・個人事業主向けに、
「社内に専任のIT担当者はいないけれど、誰かにまとめて相談したい」
というITサポートを行っています。
- パソコンの設定・入れ替え
- メール設定
- プリンター・複合機
- ネットワーク
- 共有フォルダ
- データ管理
- バックアップ
- WordPress
- Google・Microsoftなどのクラウドサービス
- 社内ITの整理
特に、
- パソコンに詳しい社員しか分からない
- その社員が退職されたら困る
- 新入社員が入るたびに同じ説明をしている
- 社内のIT設定を一度整理したい
という会社では、まず現在の環境を整理するところから始めるのがおすすめです。
ITマニュアルを作る前に、そもそも今の設定や運用方法が適切なのかを確認することも重要です。
茨城県水戸市・ひたちなか市周辺を中心に、会社のパソコンやホームページ、社内ITについてお困りのことがありましたら、アポロン7へお気軽にご相談ください。
まとめ|「これ、どうやるんでしたっけ?」は仕組み化のサイン
社内で、
「これってどうやるんでしたっけ?」
という言葉が出たとき。
それは単なる質問ではなく、まだ会社の仕組みになっていない仕事があるというサインかもしれません。
まずは1つで構いません。
- 実際の画面を撮る
- 1、2、3、4と手順を並べる
- 専門用語を説明する
- 困った場合の対応を書く
- 誰でも探せる場所へ保存する
ChatGPTを使えば、文章の整理や初心者目線でのチェックも手伝ってもらえます。
減らしたいのは、人ではありません。
毎回教えなければならない仕事。
誰かに聞かなければできない仕事。
必要な情報を探し回らなければならない仕事。
こうした時間を少しずつ減らし、人にしかできない仕事へ時間を使える会社にしていく。
それが、中小企業でAIを活用する一つの現実的な方法です。
